こんにちは!赤羽です。 レンタルサロンsimpleと上井草すまいる鍼灸整骨院を運営している鍼灸師・柔整師です。
スタートシリーズはこれから独立の準備をしている治療家に向けて、知ってもらいたい内容をストーリーにして書いています。
最初から読みたい方はこちらよりお願いします。
前回はランチェスター戦略と孫子の兵法から「戦う場所を選ぶ」ことを学びました。
今回はその続きです。

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この章で学べること
・集客に対するマインドブロックの正体
・「売り込み」と「届ける」はまったく違うこと
・困っている人に見つけてもらえないことの本当の意味
・副業段階からできる集客の最初の一歩
集客とはなにか?
「次は具体的にどう自分を知ってもらうか?の段階だね。つまり集客の話だ。」
橘がそう言った瞬間、瞬介の表情が少し曇った。
橘はそれを見逃さなかった。
「集客、苦手か?」
「苦手というか・・・なんか、好きじゃないんですよね」
「というと?」
瞬介はグラスを両手で包みながら、言葉を探した。
「自分を売り込むみたいな感じが苦手で・・・。技術や知識があれば大丈夫だって思ってたんです。腕があれば、自然と人は集まると思って・・・」
橘は何も言わなかった。
スミレも黙っていた。
しばらく沈黙が続いて、橘がゆっくり口を開いた。
「瞬介。一つ聞いていいか」
「はい」
「今この瞬間、ひどい肩こりで毎日頭痛がして、赤ちゃんを抱っこするのも辛いお母さんがいるとしよう」
「はい」
「その人は、自分で問題を解決できる?」
「いや、できないと思います」
「じゃあ、どうすれば解決できる?」
「解決できる所に行くこと・・・」
「瞬介は解決してあげられる?」
「はい。肩こりから来る頭痛なら得意です」
「でもそのお母さんは瞬介のことは知らない。存在すら知らない。だから見つけられない」
瞬介は黙って聞いていた。
「その人は今夜も頭痛を抱えたまま眠る。明日も、来週も、来月も」
橘は静かに続けた。
「その人を助けられる力が、瞬介にはある。でも瞬介は集客が嫌だから、自分のことを発信しない。その結果、その人は瞬介には助けてもらえない」
「……」
「そして誰かの発信が目に入る。助けてもらいたくて、その広告のところに行く。多くの場合は広告が得意な大手に行くだろう」
瞬介は何も言えず、聞いているしか無い。
「行った所でその人を助けてくれるならいいけど、ちゃんと助けられる人がいるとは限らない。そしてその人はまた助けてくれるところを探す。でも瞬介にはたどり着けない」
「そうですね・・・」
「その人がいつまでも誰にも助けてもらえないのは、自分には責任が無いと瞬介は言えるかな?」
瞬介は答えられなかった。
橘は責めるような口調ではなかった。ただ、静かに、事実を言っていた。
それがかえって、胸に刺さった。
「集客しないこと、つまり自分の存在を知らせないことは罪かもしれない」
橘がぽつりと言った。
「大げさに聞こえるかもしれないけど、俺はそう思ってる。助けられる人がいる。助ける力がある。なのに、見つけてもらう努力をしない。それは、その人を見捨てているのと、結果的には同じことだと思ってる」
瞬介はグラスを置いた。
「考えたことなかったです。集客って自分のためにやるものだと思ってた」
「みんなそう思うよね。でも違う。相手のため、助けを求めている人のためにやるものだよ」
スミレが静かに付け加えた。
「私はね、集客のことを『灯台を建てる』って表現するようにしてるの」
「灯台?」
「暗い海を漂っている船がある。灯台がなければ、どこに向かえば良いかわからない。でも灯台が光を発していれば、船は安全な港にたどり着ける」
「自分が灯台で、困っている人が船……」
「そう。灯台は船に向かって『こっちに来い!』って叫ばない。ただ光を出しているだけ。でもその光があるから、船は助かる」
橘が補足した。
「確かに大きな音を出して、必要のない船まで自分の港に誘導していたら、それは押し売りになる。でもそれを恐れて光を出さないのでは無責任だ」
「押し売りとは違う?」
スミレは優しくうなづき、
「押し売りじゃない。光を出し続けることが本当に必要な集客なのよ」
瞬介は、ずっと自分の中にあった、
集客 ➡️ 売り込み ➡️ 押し売り ➡️ 迷惑 ➡️ 治療家として恥ずかしい
という図式が、少しずつ崩れていくのを感じた。
「腕で勝負、っていうのは間違いじゃない」
橘が続けた。
「良い施術をすることは、絶対に必要だ。でも、良い施術をしていることを、誰も知らない。それでは意味がない」
「良い施術があっても、見つけてもらえなければ存在しないのと同じ・・・」
「そういうことだ」
橘はグラスを置いて、紙にまた書き始めた。

副業段階でやるべき集客の3つ
① Googleビジネスプロフィールを作る(無料)
「自分の施術場所を登録するだけで、Googleマップに表示される。『荻窪 肩こり 鍼灸』みたいな検索をした人に見つけてもらえる可能性が生まれる。無料でできるんだから、やらない理由がない」
「まだお店がなくても登録できるんですか?」
「レンタルサロンを施術場所として登録することもできる。実際にそうしている人はいる。もちろんレンタルサロンには許可を取る必要があるけどね」
② SNSアカウントを作る
「中心になるSNSは一つに絞れ。ランチェスター戦略と同じで一点集中。発信する内容は自分のことじゃなくて、お客さんの悩みに答えることだ」
「例えば?」
「『40代から増える肩こりの本当の原因』とか『寝ても疲れが取れない人がやりがちな3つのこと』とか。お客さんが検索しそうな言葉で書く。自分の宣伝じゃなくて、相手の役に立つ情報を出すんだ」
「どうしてSNSは一つにするんですか?」
「SNSの投稿がブレないためだよ。文章が得意ならX、写真や画像、動画が得意ならインスタをメインにするみたいな感じだね。メイン以外のSNSはメインに誘導するためのツールだと思っておいていい」
③ 紹介が出やすい一言を添える
「施術が終わった後に一言だけ言うんだ。『もし同じように悩んでいるお友達がいたら、気軽に声をかけてください』と。言わないと、紹介していいのかどうかわからない。一言伝えれば、動いてくれる人が出てくる」
「それだけでいいんですか」
「最初はそれだけでいい。完璧にやろうとするな。完璧に準備してから動こうとする人は、永遠に動けない」
気づけば店内はかなり静かになっていた。
時計を見ると、22時を過ぎていた。
「今夜は長くなったな」
橘が苦笑いした。
「本当にありがとうございました。来る前は、正直怖かったんですよ」
「怖い?」
「現実を突きつけられる気がして。お前には無理だって言われるんじゃないかって」
スミレが微笑んだ。
「今は?」
瞬介は少し考えて、答えた。
「……動けると思います」
橘は静かに頷いた。
「それで十分だよ。今夜の話を全部消化しろとは言わない。でも一つだけ持って帰れ」
「一つ?」
「困っている人がいる。あなたは助けられる。見つけてもらえないのは、あなたが光を出していないからだ」
瞬介は黙って頷いた。
「スタートラインに立つことを、恐れるな」
会計を済ませ、三人は店を出た。
夜風が心地よかった。
駅に向かいながら、瞬介はスマートフォンを取り出した。
メモアプリを開いて、一行だけ書いた。
「集客しないことは、罪かもしれない」
それだけ書いて、ポケットにしまった。
今夜は、それで十分だった。
まとめ
- 「集客=売り込み」という思い込みがマインドブロックの正体
- 困っている人に見つけてもらえないのは、光を出していないから
- 集客は「灯台を建てること」——押し売りではなく、光を出し続けること
- 良い施術があっても、見つけてもらえなければ存在しないのと同じ
- まずGoogleビジネスプロフィール・SNS・紹介の一言から始める
次回予告:第9話「副業から始める最初の一手」
居酒屋の夜が終わり、瞬介はいよいよ動き始める。
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