【スタート】〜治療家独立物語〜8 集客しないことは罪である

独立教科書

こんにちは!赤羽です。 レンタルサロンsimpleと上井草すまいる鍼灸整骨院を運営している鍼灸師・柔整師です。

スタートシリーズはこれから独立の準備をしている治療家に向けて、知ってもらいたい内容をストーリーにして書いています。

最初から読みたい方はこちらよりお願いします。

前回はランチェスター戦略と孫子の兵法から「戦う場所を選ぶ」ことを学びました。

今回はその続きです。

【スタート】 ~治療家独立物語~1 自分に気付き、動き出そう!
私の経験や学んだことをもとに、治療家が稼ぐための方法をストーリー形式でお伝えします。 第一回は独立を夢見る治療家・瞬介が、先輩の助言で自分に気付き、時間を買う転職を決意。レンタルサロンから副業を始め、現実的な開業へと歩み出すところまでのストーリー。

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この章で学べること

・集客に対するマインドブロックの正体

・「売り込み」と「届ける」はまったく違うこと

・困っている人に見つけてもらえないことの本当の意味

・副業段階からできる集客の最初の一歩

集客とはなにか?

「次は具体的にどう自分を知ってもらうか?の段階だね。つまり集客の話だ。」

橘がそう言った瞬間、瞬介の表情が少し曇った。

橘はそれを見逃さなかった。

「集客、苦手か?」

「苦手というか・・・なんか、好きじゃないんですよね」

「というと?」

瞬介はグラスを両手で包みながら、言葉を探した。

「自分を売り込むみたいな感じが苦手で・・・。技術や知識があれば大丈夫だって思ってたんです。腕があれば、自然と人は集まると思って・・・」

橘は何も言わなかった。

スミレも黙っていた。

しばらく沈黙が続いて、橘がゆっくり口を開いた。

「瞬介。一つ聞いていいか」

「はい」

「今この瞬間、ひどい肩こりで毎日頭痛がして、赤ちゃんを抱っこするのも辛いお母さんがいるとしよう」

「はい」

「その人は、自分で問題を解決できる?」

「いや、できないと思います」

「じゃあ、どうすれば解決できる?」

「解決できる所に行くこと・・・」

「瞬介は解決してあげられる?」

「はい。肩こりから来る頭痛なら得意です」

「でもそのお母さんは瞬介のことは知らない。存在すら知らない。だから見つけられない」

瞬介は黙って聞いていた。

「その人は今夜も頭痛を抱えたまま眠る。明日も、来週も、来月も」

橘は静かに続けた。

「その人を助けられる力が、瞬介にはある。でも瞬介は集客が嫌だから、自分のことを発信しない。その結果、その人は瞬介には助けてもらえない」

「……」

「そして誰かの発信が目に入る。助けてもらいたくて、その広告のところに行く。多くの場合は広告が得意な大手に行くだろう」

瞬介は何も言えず、聞いているしか無い。

「行った所でその人を助けてくれるならいいけど、ちゃんと助けられる人がいるとは限らない。そしてその人はまた助けてくれるところを探す。でも瞬介にはたどり着けない」

「そうですね・・・」

「その人がいつまでも誰にも助けてもらえないのは、自分には責任が無いと瞬介は言えるかな?」

瞬介は答えられなかった。

橘は責めるような口調ではなかった。ただ、静かに、事実を言っていた。

それがかえって、胸に刺さった。

「集客しないこと、つまり自分の存在を知らせないことは罪かもしれない」

橘がぽつりと言った。

「大げさに聞こえるかもしれないけど、俺はそう思ってる。助けられる人がいる。助ける力がある。なのに、見つけてもらう努力をしない。それは、その人を見捨てているのと、結果的には同じことだと思ってる」

瞬介はグラスを置いた。

「考えたことなかったです。集客って自分のためにやるものだと思ってた」

「みんなそう思うよね。でも違う。相手のため、助けを求めている人のためにやるものだよ」

スミレが静かに付け加えた。

「私はね、集客のことを『灯台を建てる』って表現するようにしてるの」

「灯台?」

「暗い海を漂っている船がある。灯台がなければ、どこに向かえば良いかわからない。でも灯台が光を発していれば、船は安全な港にたどり着ける」

「自分が灯台で、困っている人が船……」

「そう。灯台は船に向かって『こっちに来い!』って叫ばない。ただ光を出しているだけ。でもその光があるから、船は助かる」

橘が補足した。

「確かに大きな音を出して、必要のない船まで自分の港に誘導していたら、それは押し売りになる。でもそれを恐れて光を出さないのでは無責任だ」

「押し売りとは違う?」

スミレは優しくうなづき、

「押し売りじゃない。光を出し続けることが本当に必要な集客なのよ」

瞬介は、ずっと自分の中にあった、

集客 ➡️ 売り込み ➡️ 押し売り ➡️ 迷惑 ➡️ 治療家として恥ずかしい

という図式が、少しずつ崩れていくのを感じた。

「腕で勝負、っていうのは間違いじゃない」

橘が続けた。

「良い施術をすることは、絶対に必要だ。でも、良い施術をしていることを、誰も知らない。それでは意味がない」

「良い施術があっても、見つけてもらえなければ存在しないのと同じ・・・」

「そういうことだ」

橘はグラスを置いて、紙にまた書き始めた。

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副業段階でやるべき集客の3つ

① Googleビジネスプロフィールを作る(無料)

「自分の施術場所を登録するだけで、Googleマップに表示される。『荻窪 肩こり 鍼灸』みたいな検索をした人に見つけてもらえる可能性が生まれる。無料でできるんだから、やらない理由がない」

「まだお店がなくても登録できるんですか?」

「レンタルサロンを施術場所として登録することもできる。実際にそうしている人はいる。もちろんレンタルサロンには許可を取る必要があるけどね」

② SNSアカウントを作る

「中心になるSNSは一つに絞れ。ランチェスター戦略と同じで一点集中。発信する内容は自分のことじゃなくて、お客さんの悩みに答えることだ」

「例えば?」

「『40代から増える肩こりの本当の原因』とか『寝ても疲れが取れない人がやりがちな3つのこと』とか。お客さんが検索しそうな言葉で書く。自分の宣伝じゃなくて、相手の役に立つ情報を出すんだ」

「どうしてSNSは一つにするんですか?」

「SNSの投稿がブレないためだよ。文章が得意ならX、写真や画像、動画が得意ならインスタをメインにするみたいな感じだね。メイン以外のSNSはメインに誘導するためのツールだと思っておいていい」

③ 紹介が出やすい一言を添える

「施術が終わった後に一言だけ言うんだ。『もし同じように悩んでいるお友達がいたら、気軽に声をかけてください』と。言わないと、紹介していいのかどうかわからない。一言伝えれば、動いてくれる人が出てくる」

「それだけでいいんですか」

「最初はそれだけでいい。完璧にやろうとするな。完璧に準備してから動こうとする人は、永遠に動けない」

気づけば店内はかなり静かになっていた。

時計を見ると、22時を過ぎていた。

「今夜は長くなったな」

橘が苦笑いした。

「本当にありがとうございました。来る前は、正直怖かったんですよ」

「怖い?」

「現実を突きつけられる気がして。お前には無理だって言われるんじゃないかって」

スミレが微笑んだ。

「今は?」

瞬介は少し考えて、答えた。

「……動けると思います」

橘は静かに頷いた。

「それで十分だよ。今夜の話を全部消化しろとは言わない。でも一つだけ持って帰れ」

「一つ?」

「困っている人がいる。あなたは助けられる。見つけてもらえないのは、あなたが光を出していないからだ」

瞬介は黙って頷いた。

「スタートラインに立つことを、恐れるな」

会計を済ませ、三人は店を出た。

夜風が心地よかった。

駅に向かいながら、瞬介はスマートフォンを取り出した。

メモアプリを開いて、一行だけ書いた。

「集客しないことは、罪かもしれない」

それだけ書いて、ポケットにしまった。

今夜は、それで十分だった。

まとめ

  • 「集客=売り込み」という思い込みがマインドブロックの正体
  • 困っている人に見つけてもらえないのは、光を出していないから
  • 集客は「灯台を建てること」——押し売りではなく、光を出し続けること
  • 良い施術があっても、見つけてもらえなければ存在しないのと同じ
  • まずGoogleビジネスプロフィール・SNS・紹介の一言から始める

次回予告:第9話「副業から始める最初の一手」

居酒屋の夜が終わり、瞬介はいよいよ動き始める。

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