こんにちは!赤羽です。 レンタルサロンsimpleと上井草すまいる鍼灸整骨院を運営している鍼灸師・柔整師です。
スタートシリーズはこれから独立の準備をしている治療家に向けて、知ってもらいたい内容をストーリーにして書いています。
最初から読みたい方はこちらよりお願いします。
前回はランチェスター戦略と孫子の兵法から「戦う場所を選ぶ」ことを学びました。
今回はその続きです。

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この章で学べること
・お金を受け取ることへのマインドブロックの正体
・高い料金を支払ってもらえる理由
・正当な価格を受け取るべき理由
・喜多川泰さんの著書から学ぶ「円=ありがとう」の意味
お金への罪悪感とは
あの居酒屋の夜から、数ヶ月が経っていた。
橘から連絡が来たのは、何気ない平日の昼下がりだった。
「明日そっちに行く予定があるんだけど、昼過ぎに少し時間取れる?」
短い一言だったが、瞬介はすぐに返信した。
「空いてます。っていうか絶対に空けます。」
待ち合わせは駅前のカフェだった。
先に着いていた橘は、コーヒーを飲みながらスマートフォンを眺めていた。
瞬介の顔を見て、少し目を細めた。
「なんか、顔つきが変わったな」
「そうですか?」
「いい意味でね。調子はどうだ?」
「少しずつですが仕事になりそうな感じがしています。レンタルサロンで施術してますが、リピーターになってくれる人もちょこちょこ出てきています。」
橘は静かに頷いた。
「そうか。それは素晴らしい」
「毎日緊張の連続です。でも、お客さんが帰り際に『楽になった、ありがとう』って言ってもらえると、本当に嬉しいです」
「最高だね」
「勤めている時も『ありがとう』は言ってもらってましたが、自分の仕事となると、なんていうか、さらに嬉しいものですね」
「そうだね。自分で作り上げた仕事で喜んでもらえると、本当に嬉しいよね」
「はい」
しばらく沈黙が続いた。
コーヒーの香りが漂う中、瞬介は少し迷ってから口を開いた。
「でもひとつ、ずっと引っかかってることがあって」
「なんだ」
「お金を受け取る時に、なんか罪悪感があるんですよね。お客さんに支払ってもらう料金はそれなりの金額になるんで・・・なんか申し訳ないというか・・・」
橘はカップを置いた。
「それ、よくある話だね」
「橘さんも最初はそう思いましたか?」
「思った。でも今は全く思わなくなった。ある考え方を知ってから、変わったんだ」
「どんな考え方ですか?」
橘はテーブルのメニューを指さした。
「このメニューの【コーヒー】の横に書いてある数字って、何て読む?」
「え、500円って書いてあります」
「そうだね。確かに500円。でも『円』という字には他の読み方があるんだ。何て読むと思う?」
瞬介は少し考えた。
「『まるい』とかですね。人の名前だと『まどか』なんて読むこともありますけど・・・」
「あとは、『つぶら』とか『まろやか』とかも読むけど。でもそういう意味じゃないんだ」
「どういうことですか?」
「ちょっと意地悪な聞き方だったね。もう一度聞くね。この『円』にはどういう意味があると思う?」
「円は通貨の単位で・・・、えっと・・・お金を数える時に使う・・・」
瞬介がアタフタしているのを見て、橘は優しく話しだした。
「喜多川泰さんの【君と会えたから・・・】という本にあったんだけど、『円』と書いて『ありがとう』と読むんだそうだ。誰かに助けてもらった時、人はありがとうを言う。そして、そのありがとうの証としてお金を払う」

一杯のコーヒーに関わる人は?
瞬介は黙って聞いていた。
「たとえば、このコーヒーを瞬介は作れる?」
「僕は結構コーヒー入れるの得意ですよ。自分で豆を挽いて作ることもたまにあります」
「そうなんだ。意外だね。で、そのコーヒー豆が瞬介の所に届かなかったら?」
「さすがに豆が無いと作れないですね」
「では何もない状態から、瞬介がコーヒー一杯作るとしたらできる?」
「いや無理です。まずコーヒー豆を作らないとだし、コーヒー豆の栽培は日本だと難しいし・・・」
「そうだよね。でも誰かがそれをしてくれているから、今瞬介の目の前にコーヒーがある」
「はい・・・」
瞬介は戸惑いながら返事をした
「このコーヒーが瞬介の所に届くまでには多くの人の仕事が関わっている。注文を受けてコーヒーを持ってきてくれた店員さん、コーヒーを淹れてくれる人、仕入れをする人、お店の管理をする人・・・」
瞬介は急いでメモを取り出した。
「お店まで運ぶ人、コーヒーを入れる機械を管理する人、輸入する人・・・もうキリがないくらいの人が関わっている」
「そうですね」
「その人達全てに感謝だよね。でも実際には全員に『ありがとう』と言いには行けない。その『ありがとう』という意味でお金を支払っているんだ」
瞬介はハッとした。
「瞬介が払った500円がそれぞれの人に届くんだ」
「なるほど」
「施術も同じだよ。肩こりがひどくて毎日つらい人が、瞬介に助けてもらった。楽になった。その時に渡すお金は、ありがとうの証だ。罪悪感を持つ話じゃない」
瞬介は納得しながらも、少し引っかかる所があった。
「コーヒーの話はとても良くわかりました。でも僕の施術にはほとんど仕入れが無いので、ほとんど僕が受け取ってるんですが・・・」
「それは思い上がりだよ」
橘は優しく微笑みながら続けた。
「瞬介が施術するためのベッドを作った人やそれを用意したレンタルサロンを運営・管理している人、電気を作る人、それにここまで技術や知識を付けるために教えてくれた人達・・・瞬介が受け取った『円=ありがとう』は、瞬介を通してそれぞれの人に届くんだ」
「それでも安いほうがお客さんは喜んでくれますよね」
「確かに。でも瞬介が受け取る『円=ありがとう』が少なければ、他の人にも少ししか届かない」
瞬介はハッとした。
「そうか・・・僕が受け取らなければ、仕事をするために必要な様々な事を用意してくれている人達に『円=ありがとう』が届かないのか」
「そういうことなんだ」
「じゃあ、値段はどうやって決まるんですか?」
「その人しか助けられないかどうか?だよ」
橘は続けた。
「誰にでもできることには『円=ありがとう』はたくさん集まらない。コンビニで水を買っても、感謝はするけど深くは感謝しない。なぜなら、どこでも買えるから」
「でも……」
「砂漠で死にかけている人に水を売ったら、その人はどれだけありがとうと思うか。同じ水でも、その人にしか届けられない状況なら、ありがとうの重さが全然違う」
瞬介は少し考えてから言った。
「つまり、換えが効かないものほど、ありがとうが大きくなる」
「そういうことだ。瞬介にしか助けられない人がいる。その人の痛みや悩みを、瞬介の技術と知識でしか解決できない。その時のありがとうは、誰にでもできる施術のありがとうとは、重さが全然違う」
「じゃあ逆に、安くしたら……」
「安くするということは、自分の施術をどこにでもあるものだと言っているようなものだよ」
橘はそう言ってコーヒーを一口飲んだ。
「3,000円の施術と10,000円の施術、どちらが患者さんのありがとうが大きいと思う?」
「10,000円・・・ですよね」
「なぜだと思う?」
「それだけの価値があると思って払っているから・・・」
「そう。そしてそれだけのありがとうをもらう責任が、施術者側にも生まれる。高いお金を払ってもらうから、全力を尽くす。全力を尽くすから、技術が上がる。技術が上がるから、もっと深いありがとうをもらえる」
瞬介は静かに聞いていた。
「お金を稼ぐことへの罪悪感は、お金の本質を誤解しているから生まれるんだ。お金とは奪いあうものじゃない。ありがとうを集めるものだ」
「でも、お金のために仕事をするのは、なんか・・・」
「違う」
橘は静かに、しかしはっきりと言った。
「お金のために仕事をするんじゃない。目の前の人を助けるために全力を尽くす。その結果として、ありがとうが集まる。その証としてお金がついてくる」
「順番が大事、ということですか」
「そうだ。ありがとうを集めようとして仕事をするのと、お金を集めようとして仕事をするのは、全く違う。前者は患者さんのことを考える。後者は自分のことしか考えていない。患者さんはその違いを、ちゃんと感じ取る」
カフェの外を、人が行き交っていた。
瞬介はしばらく黙って、窓の外を見ていた。
「なんか、楽になりました」
「そうか」
「お金を稼ぐことが、患者さんへの感謝をもらうことだと思ったら、怖くなくなってきた気がします」
橘は小さく笑った。
「じゃあ次は、もっとたくさんのありがとうをもらえる治療家になることを考えろ」
「はい」
「その人にしか助けられない、というポジションを作ることだ。誰にでもできる施術をしている限り、ありがとうの量は増えない。瞬介にしか頼めない、という状況を作ることが、高単価への道でもある」
瞬介は、メモに大きく力強い字で書いた。
「お金はありがとうの数。円をありがとうと読む。」
それだけ書いて、顔を上げた。
橘は頷いた。
「瞬介の事を必要としている人がいる。そのために動き続けろ。それだけだ」
まとめ
・お金はありがとうの数
・円(えん)をありがとうと読む
・助けてもらった時の感謝の証がお金(円)
・その人にしか助けられないほど、ありがとうの重さは大きくなる
・誰にでもできることでは、大きなありがとうは集まらない
・お金を稼ぐことへの罪悪感は、お金の本質を誤解しているから生まれる
・順番が大事:患者さんを助ける→ありがとうが集まる→お金がついてくる



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