「安くすれば患者さんが来る」でいいのか? 安売りが治療家人生を狂わせる理由

マーケティング

こんにちは!レンタルサロンsimpleの赤羽です。

普段は私自身も上井草すまいる鍼灸整骨院で鍼灸師として施術をしています。

私の治療院のキャッチコピーは開業当初から「ちょっと高いが、すごく効く」です。

基本的に安売りはせず、単価を上げることを重視して院運営を行ってきました。

価格設定等は多くの治療家が悩むポイントだと思います。

  • 価格設定で悩んでいる方
  • 独立・開業を考えている方
  • 開業したばかりの方

等の皆さんにぜひ読んでほしいテーマです。

「最初は安くして、まず集客することが大事」

こう考えている方は多いのではないでしょうか。

気持ちはよくわかります。

予約が入らない日、売上0の日が続くのは、本当につらいですね。

でもその「安売りスタート」が長期的にどれだけリスクを抱えているかを、数字を交えながら正直にお伝えします。

まず数字で見てみましょう

メニューが色々有るとわかりにくいので、ここでは整体50分コースのみと仮定してお話します。

料金別に、月の売上と利益を比較してみましょう。

売上だけでなく、利益も考える必要があります。

利益は「売上ー費用」です。

費用には変動費と固定費があります。

  • 変動費とは売上によって変化する費用
  • 固定費は売上が上がっても下がっても変わらない費用

という分け方になります。

治療家の仕事の経費は、ほとんどが固定費です。

家賃・水道光熱費・リース料・保険料・通信費などが固定費にあたります。

治療院の場合、材料費や仕入れがほとんどないため、経費の大部分が固定費になります。

変動費といえば、鍼灸院の鍼やお灸、整骨院のテーピング等にかかる仕入れ代くらいです。

つまり患者さんが1人でも10人でも、かかる経費はほぼ同じということです。

これを踏まえて、ざっくり固定費25万円として考えてきます。

1日の施術人数を料金帯ごとに設定して計算してみましょう。

こちらの表をご確認ください。

3,000円×7人5,000円×5.5人10,000円×4人
月25日稼働売上525,000円売上687,500円売上1,000,000円
利益275,000円437,500円750,000円
月22日稼働売上462,000円売上605,000円売上880,000円
利益212,000円355,000円630,000円

客単価別になっています。

客単価が安いほど、来院人数は多く設定しています。(安ければ人は集まりやすいので)

注目してほしいのは、3,000円は毎日7人施術しないと成り立たないという点です。

50分を毎日7人施術するのは、かなりの体力を要します。

そして当然、時間もかかります。

一方で10,000円なら4人で充分売上が上がります。

少ない人数でも、3,000円の7人よりはるかに多い利益が残ります。

当然、体力も時間も余裕が出ます。

高単価は身体の負担が少なく、利益も大きい。

安売りは身体への負担が大きいのに、利益は少ない。

これが安売りの現実です。

安売りが集める客層の話

安売りすれば、お客さんを集めるのは簡単です。

しかし、3,000円で集まってくれた患者さんはどんな方でしょうか?

当然ながら、「安いから来た」という方がほとんどになります。

世の中には「安いが正義」と思っている人が多いのも事実です。

これは変えようが無い事実です。

人が集まったのは良いとして、問題はその後です。

しばらくして安売りではやってられないと気づいた時を考えてみましょう。

料金を5,000円や10,000円にしたら、

「この先生の施術には、その価格を払う価値がある」と感じて残ってくれる人はどれくらいいるでしょうか?

残念ながら、かなり低い確率だと私は考えています。

なぜなら、そもそも集まっている人は、安さを第一優先で考えている人達です。

どれだけ良い施術を提供したとしても、料金を最初に考えられてしまったら、継続するのは困難です。

しかも最初が安ければ安いほど、値上げ感は大きくなります。

3000円が5000円になったら67%値上げ、10000円にしたら、233%の値上げです。

いきなり料金が3倍になったら、ぼったくられたと思ってしまいますよね。

たとえ自分の技術に対しては正当な価格だったとしても、一度安売りしてしまうとこの様な感覚が出てしまいます。

それだけは避けたいですね。

良い顧客は来ない

さらに深刻なのは、本当に良い施術を求めている患者さんが離れていく可能性です。

「あそこは安い整体院」というイメージがついてしまったら、価値の高い施術を求めるターゲット層はそもそも検討リストに入れてくれません。

仮に5000円にしてから来てくれたお客さんも「ついこの前まで、ここの料金は3000円だった」と知ったら、損した気になります。

ハンバーガーで考えてみる

わかりやすいのはマクドナルドのハンバーガーです。

マックでは一番安い時、ハンバーガーは59円でした。(2003年頃)

だんだん値上げして、現在は180円位です。

ちなみに私はその頃マクドナルドの社員でした。

新宿近辺の店で朝から深夜までバリバリ働きまくってました😅

2003年頃は歌舞伎町の店(今のゴジラの横)だったかな?

ハンバーガー価格備考
1971年80円日本1号店オープン(銀座三越)
1979年170円経済成長期に値上げ
1985年210円バブル前・過去最高値
1995年130円バブル崩壊後、大幅値下げ
2002年80円創業時の価格に逆戻り
2003年59円⭐ 過去最安値(キャンペーン価格)
2007年100円100円台に回復
2013年頃120円100〜120円をキープ
2022年150円原材料・物流費高騰で値上げ
2023年170円さらに値上げ
2026年180円前後約6割のメニューを値上げ

現在の物価状況を考えたら180円でも充分安いですが、59円や80円の時代を知っている人からしたら「高くなったな〜」という感覚です。

セットも昔は400円〜600円だったのに、今では800〜900円位は必要です。

20年前後に付いた安いイメージを払拭するために、20年以上かけた今でもマクドナルドは苦戦しています。

マクドナルドほどの大企業でも、安いイメージが付いたらそれを払拭するのに苦労するのですから、町の治療院では尚更です。

安いイメージが一度付いてしまったら、どれだけ頑張っても厳しい戦いが待っています。

安い客ほど文句を言う

これは多くの治療家が経験していることですが、低価格帯の患者さんほどクレームが多い傾向があります。

低価格で受けた施術に対しては

  • 効かなかった
  • 説明が少なかった
  • 時間が短かった
  • 適当にされた

という声は少なくありません。

一方で、10,000円払って来てくれる患者さんからは、その様な意見はあまり出ません。

「それだけの価値がある」と納得した人だけが来るので、文句の出様も無いですね。

むしろ高価格帯を選ぶ人からは意見を言ってもらえた方が良いです。

低価格帯の時のクレームは、ただの文句であることが多いのに対して、高価格帯で発生するクレームは意見になることが多いです。

そして忘れてはいけないのは、「高価格帯を選ぶ人には選択肢がいっぱいある」ということです。

この人達はクレームを言わず、静かに去っていくことが多いです。

不満なことがあった場合でも、文句も言わずに静かに立ち去っていきます。

安売りで苦労した話

前述の通り、私は安売り時代のマクドナルドで働いていました。

当時もマクドナルドには色々なお客さんが来ていました。

良いお客さんもいれば、そうでもない人もいました。(特に歌舞伎町😂)

80円のハンバーガーや100円のコーヒーについて、よくクレームを受けました。

もちろん誠実に対応していましたが、心のなかでは

「100円のコーヒーについて、よくここまで長い時間文句言えるな〜」

と思っていました。

一方で1万円以上の施術を提供している今では、クレームを言われることはまずありません。

私自身の実体験からも、価格帯によってクレームの出方が全く違うことを痛感しています。

安売りは集客のためのはずが、クレーム対応に追われる未来を引き寄せてしまう可能性が高くなります。

身体は疲れる、利益は少ない、おまけに文句も多い。

「安売りには、ものすごいリスクがあるのに、メリットが圧倒的に少ない」

と私は考えています。

「安いイメージ」はあっという間につく

私は開業から14年間、

「ちょっと高いが、すごく効く」

というキャッチコピーを掲げてきました。

言い換えれば、14年間かけてこのイメージを作ってきました。

でも崩れるのは、あっという間です。

築城三年、落城三日

という言葉があります。

ブランドやイメージは、まさにこれです。

14年かけて作り上げたイメージでも、3日もあれば崩れてしまいます。

安売りを一度定着させてしまうと、そのイメージを払拭するのに何倍もの時間と労力がかかるということを忘れないでください。

都内の施術料金の相場を知っておこう

参考までに、都内の相場をお伝えします。

  • 国家資格所持者の整体:6,000〜10,000円
  • 一般整体院:5,000〜7,000円
  • もみほぐし・リラク系(アルバイトスタッフ):4,000〜6,000円

もしあなたが集客したいからといって、この相場から逸脱した安さを提供したら安いイメージはあっという間に付くでしょう。

価格を下げてもいい場合

とは言っても、時には集客のために価格を下げることもあるでしょう。

しかしその場合でも、ただ安くしてはいけません。

必ず下記の条件に当てはめましょう。

  • 通常価格は下げない
  • 条件付きにする
  • 期限を切る
  • 長期視点で考える

これらに当てはまる場合に限り、値引きする意味はあります。

それぞれ解説していきます。

通常価格は下げない

価格を下げるのは、必ず一時的な値引きにしましょう。

1〜2週間のキャンペーンなどであれば、良いでしょう。

この場合でも、通常価格との差が大きすぎると、その後に繋がりにくくなります。

10〜30%OFFくらいまでに抑えましょう。

条件付きにする

安売りする時は必ず条件を付けましょう。

  • まとめ買い(回数券)
  • 期間限定(キャンペーン)
  • 初回限定
  • 日時限定(ハッピーアワー)
  • 学割
  • ペア割

この様に条件を付けましょう。

ただの安売りにならないように。

期限を切る

値引きは必ず期限を先に決めておきましょう。

期限を決めないと、いつまでも安売りし続けることになります。

いつでも「閉店セールをしている店」みたいにならないようにしましょう。

長期視点で考える

ここまでで書いた通り、安売りには大きなリスクがあります。

そのリスクを負っても、後でそれ以上のメリットが回収されるのなら良いでしょう。

今だけの事で考えず、必ず長期視点で考えるようにしましょう。

店舗イメージを損なわないように。

安売りを続けた3ヶ月後に待っているもの

安売りを続けた場合、未来にはこんな状況が待っている可能性があります。

  • 売上は少ないのに身体は疲弊している
  • クレームや無理な要求をしてくる患者さんが増えている
  • 通常料金に戻した途端、予約がガラガラになる
  • 「安い整体院」のイメージが定着してしまっている

そして何よりも怖いのは、仕事へのモチベーションが大きく下がることです。

「独立してよかった」と思えるはずの経験が、「もう開業なんてしたくない」という気持ちに変わってしまうかもしれません。

では、どうすればいいか

予約が入らない、誰も来ないというのは確かに辛いですね。

でも安売りだけが集客の手段ではありません。

安売りは、あらゆる集客を試した後の最終手段です。

売上を上げるためには予約数より、来てくれた1人を確実にリピーターにすることを重視したほうが長期的には重要です。

まとめ

「安くすれば患者さんが来る」では、長く続きません。

漂流者が喉が乾いて海水を飲むようなものです。

一度安売りしてしまうと、長期的に自分のブランドを自分で壊す行為になってしまいます。

しかも集まってくる客層は、文句が多くて疲弊する人達。

あなたが持っている技術と資格には、ちゃんとした価値があります。

その価値を正しい価格で伝えることが、長く続く治療家としての第一歩です。

予約が少なくて不安な時期こそ、価格を下げるのではなく、価値を上げる・価値を伝えるということに力を入れてみてください。

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