こんにちは!赤羽です。 レンタルサロンsimpleと上井草すまいる鍼灸整骨院を運営している鍼灸師・柔整師です。
スタートシリーズはこれから独立の準備をしている治療家に向けて、知ってもらいたい内容をストーリーにして書いています。
最初から読みたい方はこちらよりお願いします。

前回は仕事でお金を受け取る意味について学びました。
今回はその続き、多くの人が悩む価格設定についてです。
自信を持って値決めできるように一緒に学んでいきましょう👍️
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この章で学べること
・安売りはダメ。でも最初から高すぎても顧客は来ない
・正規料金を先に決めて、そこから期間限定で下げる
・値上げではなく「元に戻す」形にする
・価格は受け取るもの、価値は提供するもの
「じゃあ、いくらにすればいいんですか」
前回のカフェから2週間後、瞬介は橘に連絡を取った。
「相談したいことがあるんです。料金設定をどうしたら良いか悩んでます」
橘はすぐに返信をくれた。
橘は今大阪にいるので、オンラインでということになった。
「最近は調子どうだい?」
橘は笑顔で切り出した。
「実は、店舗を借りようと思って動き始めてるんです」
「お、いよいよだね」
「はい。まだ物件を調べている段階なんですけど、そろそろ本気で準備しないとと思って」
副業を始めてから半年が経っていた。
レンタルサロンでの施術は6千円で続けてきた。
前の職場の患者さんや、知り合いの紹介がほとんどだったから、知り合い価格って感じで。
でも店舗を持つとなれば話が違う。
家賃も光熱費もかかる。新規のお客さんに、初めて自分の価格を提示することになる。
「それで、料金なんですけど・・・前回お話してもらった『お金はありがとうの数だ』っていう話、あれからずっと考えてたんです」
「うん」
「安くするのは自分の価値を下げることだって、頭では分かりました。でも実際に料金表を作ろうとしたら、手が止まっちゃって」
「なんで止まった?」
「・・・怖いんです。今は6千円でやってますけど、店舗を持ったらもっともらわないと成り立たない。でも今の俺に1万円とかもらう資格があるのかなって」
画面の向こうで橘は微笑んで聞いていた。
「いい悩み方だね。それ、安易に1万円って書ける人より、ずっといい」
「そうですか?」
「うん。でも今日はその怖さを、ちゃんと整理しよう」
高すぎても、人は来ない
「まず前提を確認しておく。安売りはダメだ。これは前にも話したよね」
「はい。安くすると、安さで選ぶ人しか来なくなる」
「そう。じゃあ逆に、今日から1万5千円ですって料金表を出したらどうなると思う?」
瞬介は少し考えた。
「・・・たぶん、誰も来ないです」
「なんで?」
「実績がないから。今来てくれてる人は昔からの知り合いばかりだし、新しい人には俺のことが何も伝わってない」
「その通り。価格っていうのは、価値の証明とセットじゃないと機能しないんだ」
橘は続けた。
「経験豊富な施術者の1万5千円は納得される。でも、開業したばかりで口コミもゼロ、実績も見えない人の1万5千円は、ただの高い店だ」
「じゃあ、どうすれば・・・」
「ここで多くの人が間違える。高すぎて来ないから、安くしようと考えてしまう」
「あ」
「そうやって3千円にする。すると安さで人は来る。でもそこから戻せなくなる。これが前に話した罠だ」
順番を間違えるな
「じゃあどうしたら良いんですか?」
「先に正規料金を決めておくことだよ」
橘の声がはっきりした。
「たとえば正規料金を1万円と決める。そのうえで、開業から3ヶ月間だけ、初回限定で6千円にする。これは安売りじゃない」
「あ、でも俺、今も6千円でやってますけど・・・、変わってないような・・・?」
「それは知り合い価格だろ?『知り合いだから特別に』っていうのは理由での料金だ。でもそれを新規のお客さんにも同じ額で出したら、それはもう知り合い価格じゃなくて、ただの正規料金になる」
「あ・・・」
「だから店舗を出すときに、きちんと宣言し直すんだ。正規料金は1万円。ただし開店記念で3ヶ月だけ6千円。そう言えば、同じ6千円でも意味が変わる」
「え・・?でも、結局安くするのは変わりませんよね?」
「違うんだ。ここが決定的に違う」
橘は言葉を選ぶように、ゆっくり話した。
「6千円で始めた人が1万円にするのは値上げだ。お客さんから見たら、いきなり高くなった店という感覚だ」
「はい」
「でも正規料金1万円のところを、期間限定で6千円にしていた人が1万円に戻すのは、値上げじゃない。元に戻すだけだ」
「あ・・・!」
「同じ金額を受け取っていても、意味が全然違う。最初に何を宣言していたかで、後の展開が変わるんだよ」
瞬介はメモを取りながら、背中に汗をかいていた。
6,000円 → 開業記念・初回限定
瞬介のメモ
1万円 → 正規料金
危なかった。あと少しで、安い料金表を作るところだった。
安くする理由を持て
「ただし条件がある」瞬介の沈黙を読んで、橘が続けた。
「安くするなら、必ず理由を明確にすること」
「理由?」
「開業記念でも、モニター価格でも、初回限定でもいい。とにかく、なぜ安いのかを明示する」
「理由がないとダメなんですか」
「理由がない安さは、ただの安い店になる。でも理由がある安さは、特別な機会になる。同じ6千円でも、受け取られ方が違うんだ」
「なるほど……」
「もう一つ。期限を先に決めておくこと」
「期限」
「終わりを決めずに始めると、ずっと安いままになる。閉店セールを3年続けてる店、見たことあるだろう?」
瞬介は思わず笑った。確かに駅前にそんな店がある。
「あれにはなるなよ。3ヶ月なら3ヶ月。20人限定なら20人。先に決めて、公表しておくんだ」
その期間に何をするか
「で、ここからが本題だ」
橘の声が少し強くなった。
「安くしている期間は、割引で客を集める期間じゃない。何をする期間だと思う?」
「えっと、経験を積む期間ですか?」
「それもある。経験を積んで自信を付けることもとても大切だ。でも、もっと大事なことがある」
橘は間を置いた。
「証拠を集める期間だ」
「証拠?」
「1万円をもらうには、1万円の価値があると信じてもらう必要がある。でも、瞬介にはまだそれを証明するものがない」
「はい・・」
「だから安くしている期間に、それを作るんだ。施術後の感想、変化の記録、通ってくれた人の声。1万円を正当化する材料を、この期間に積み上げる」
瞬介はハッとした。
「安くするのは、集客のためじゃなくて・・・」
「そう。次の価格を支えるための投資期間だ。ここを遊んでいたら、3ヶ月後に1万円に戻したとき、誰も残らない」
受け取るのは価格、提供するのは価値
「最後にひとつだけ、覚えておいてほしい言葉がある」
橘はそう前置きして、こう言った。
「受け取るのは価格。提供するのは価値だ」
瞬介はその言葉を、そのままメモに書いた。
「受け取るのは価格」
瞬介のメモ
「提供するのは価値」
「価格は、こちらが決めて、相手からもらうもの。数字だから、上げたり下げたりできる」
「はい」
「でも価値は、こちらが提供するものだ。そして価値を決めるのは、こちらじゃない。受け取った相手だ」
「相手が決める・・・」
「そう。だから瞬介がやるべきなのは、価格をいくらにするか悩み続けることじゃない。その価格を、相手が納得する価値で埋めることなんだ」
瞬介は黙って聞いていた。
「6千円もらうなら、6千円以上の価値を返す。1万円もらうなら、1万円以上を返す。受け取った以上のものを返し続けていれば、価格は自然と上げられるようになる」
「ってことは、逆に言うと・・・」
「うん。価格に価値が追いついていない状態で値上げすると、必ず離れられる。だから怖いのは値上げそのものじゃない。価値が伴っていないことなんだ」
怖さの正体
オンラインミーティングの最後に橘は付け加えた。
「さっき瞬介、1万円もらう資格があるのかって言ったよね」
「はい」
「その感覚は、忘れないでいい。その怖さがあるうちは、手を抜かないから」
「はい」
「怖くなくなったときが危ない。もらって当然だと思った瞬間に、価値の提供が止まる」
瞬介はメモの最後に、一行だけ書き足した。
怖さは、手を抜かないためのブレーキ
瞬介のメモ
その夜、瞬介は料金表を作った。
正規料金 1万円。
そして、その下に小さくこう書いた。
開業記念 初回限定6,000円(先着20名様まで)
指が震えたが、書けた。
まとめ
・安売りはダメ。でも実績のない状態で高すぎても顧客は来ない
・先に正規料金を決めて、そこから期間限定で下げる
・「値上げ」ではなく「元に戻す」形にすれば、抵抗が生まれない
・安くする理由と期限を、必ず先に決めて公表する
・安い期間は集客期間ではなく、次の価格を支える証拠を集める期間
・受け取るのは価格、提供するのは価値。価値を決めるのは相手
・「もらう資格があるのか」という怖さは、手を抜かないためのブレーキ



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