【スタート】〜治療家独立物語〜10 受け取るのは価格、提供するのは価値

独立教科書

こんにちは!赤羽です。 レンタルサロンsimpleと上井草すまいる鍼灸整骨院を運営している鍼灸師・柔整師です。

スタートシリーズはこれから独立の準備をしている治療家に向けて、知ってもらいたい内容をストーリーにして書いています。

最初から読みたい方はこちらよりお願いします。

【スタート】 ~治療家独立物語~1 自分に気付き、動き出そう!
私の経験や学んだことをもとに、治療家が稼ぐための方法をストーリー形式でお伝えします。 第一回は独立を夢見る治療家・瞬介が、先輩の助言で自分に気付き、時間を買う転職を決意。レンタルサロンから副業を始め、現実的な開業へと歩み出すところまでのストーリー。

前回は仕事でお金を受け取る意味について学びました。

今回はその続き、多くの人が悩む価格設定についてです。

自信を持って値決めできるように一緒に学んでいきましょう👍️

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この章で学べること

・安売りはダメ。でも最初から高すぎても顧客は来ない

・正規料金を先に決めて、そこから期間限定で下げる

・値上げではなく「元に戻す」形にする

・価格は受け取るもの、価値は提供するもの

「じゃあ、いくらにすればいいんですか」

前回のカフェから2週間後、瞬介は橘に連絡を取った。

「相談したいことがあるんです。料金設定をどうしたら良いか悩んでます」

橘はすぐに返信をくれた。

橘は今大阪にいるので、オンラインでということになった。

「最近は調子どうだい?」

橘は笑顔で切り出した。

「実は、店舗を借りようと思って動き始めてるんです」

「お、いよいよだね」

「はい。まだ物件を調べている段階なんですけど、そろそろ本気で準備しないとと思って」

副業を始めてから半年が経っていた。

レンタルサロンでの施術は6千円で続けてきた。

前の職場の患者さんや、知り合いの紹介がほとんどだったから、知り合い価格って感じで。

でも店舗を持つとなれば話が違う。

家賃も光熱費もかかる。新規のお客さんに、初めて自分の価格を提示することになる。

「それで、料金なんですけど・・・前回お話してもらった『お金はありがとうの数だ』っていう話、あれからずっと考えてたんです」

「うん」

「安くするのは自分の価値を下げることだって、頭では分かりました。でも実際に料金表を作ろうとしたら、手が止まっちゃって」

「なんで止まった?」

「・・・怖いんです。今は6千円でやってますけど、店舗を持ったらもっともらわないと成り立たない。でも今の俺に1万円とかもらう資格があるのかなって」

画面の向こうで橘は微笑んで聞いていた。

「いい悩み方だね。それ、安易に1万円って書ける人より、ずっといい」

「そうですか?」

「うん。でも今日はその怖さを、ちゃんと整理しよう」

高すぎても、人は来ない

「まず前提を確認しておく。安売りはダメだ。これは前にも話したよね」

「はい。安くすると、安さで選ぶ人しか来なくなる」

「そう。じゃあ逆に、今日から1万5千円ですって料金表を出したらどうなると思う?」

瞬介は少し考えた。

「・・・たぶん、誰も来ないです」

「なんで?」

「実績がないから。今来てくれてる人は昔からの知り合いばかりだし、新しい人には俺のことが何も伝わってない」

「その通り。価格っていうのは、価値の証明とセットじゃないと機能しないんだ」

橘は続けた。

「経験豊富な施術者の1万5千円は納得される。でも、開業したばかりで口コミもゼロ、実績も見えない人の1万5千円は、ただの高い店だ」

「じゃあ、どうすれば・・・」

「ここで多くの人が間違える。高すぎて来ないから、安くしようと考えてしまう」

「あ」

「そうやって3千円にする。すると安さで人は来る。でもそこから戻せなくなる。これが前に話した罠だ」

順番を間違えるな

「じゃあどうしたら良いんですか?」

先に正規料金を決めておくことだよ」

橘の声がはっきりした。

「たとえば正規料金を1万円と決める。そのうえで、開業から3ヶ月間だけ、初回限定で6千円にする。これは安売りじゃない」

「あ、でも俺、今も6千円でやってますけど・・・、変わってないような・・・?」

「それは知り合い価格だろ?『知り合いだから特別に』っていうのは理由での料金だ。でもそれを新規のお客さんにも同じ額で出したら、それはもう知り合い価格じゃなくて、ただの正規料金になる」

「あ・・・」

「だから店舗を出すときに、きちんと宣言し直すんだ。正規料金は1万円。ただし開店記念で3ヶ月だけ6千円。そう言えば、同じ6千円でも意味が変わる」

「え・・?でも、結局安くするのは変わりませんよね?」

「違うんだ。ここが決定的に違う」

橘は言葉を選ぶように、ゆっくり話した。

「6千円で始めた人が1万円にするのは値上げだ。お客さんから見たら、いきなり高くなった店という感覚だ」

「はい」

「でも正規料金1万円のところを、期間限定で6千円にしていた人が1万円に戻すのは、値上げじゃない。元に戻すだけだ」

「あ・・・!」

「同じ金額を受け取っていても、意味が全然違う。最初に何を宣言していたかで、後の展開が変わるんだよ」

瞬介はメモを取りながら、背中に汗をかいていた。

6,000円 → 開業記念・初回限定
1万円 → 正規料金

瞬介のメモ

危なかった。あと少しで、安い料金表を作るところだった。

安くする理由を持て

「ただし条件がある」瞬介の沈黙を読んで、橘が続けた。

「安くするなら、必ず理由を明確にすること」

「理由?」

開業記念でも、モニター価格でも、初回限定でもいい。とにかく、なぜ安いのかを明示する」

「理由がないとダメなんですか」

「理由がない安さは、ただの安い店になる。でも理由がある安さは、特別な機会になる。同じ6千円でも、受け取られ方が違うんだ」

「なるほど……」

「もう一つ。期限を先に決めておくこと

「期限」

「終わりを決めずに始めると、ずっと安いままになる。閉店セールを3年続けてる店、見たことあるだろう?」

瞬介は思わず笑った。確かに駅前にそんな店がある。

「あれにはなるなよ。3ヶ月なら3ヶ月。20人限定なら20人。先に決めて、公表しておくんだ」

その期間に何をするか

「で、ここからが本題だ」

橘の声が少し強くなった。

「安くしている期間は、割引で客を集める期間じゃない。何をする期間だと思う?」

「えっと、経験を積む期間ですか?」

「それもある。経験を積んで自信を付けることもとても大切だ。でも、もっと大事なことがある」

橘は間を置いた。

証拠を集める期間だ」

「証拠?」

「1万円をもらうには、1万円の価値があると信じてもらう必要がある。でも、瞬介にはまだそれを証明するものがない」

「はい・・」

「だから安くしている期間に、それを作るんだ。施術後の感想、変化の記録、通ってくれた人の声。1万円を正当化する材料を、この期間に積み上げる

瞬介はハッとした。

「安くするのは、集客のためじゃなくて・・・」

「そう。次の価格を支えるための投資期間だ。ここを遊んでいたら、3ヶ月後に1万円に戻したとき、誰も残らない」

受け取るのは価格、提供するのは価値

「最後にひとつだけ、覚えておいてほしい言葉がある」

橘はそう前置きして、こう言った。

受け取るのは価格。提供するのは価値だ

瞬介はその言葉を、そのままメモに書いた。

「受け取るのは価格」
「提供するのは価値」

瞬介のメモ

「価格は、こちらが決めて、相手からもらうもの。数字だから、上げたり下げたりできる」

「はい」

「でも価値は、こちらが提供するものだ。そして価値を決めるのは、こちらじゃない。受け取った相手だ

「相手が決める・・・」

「そう。だから瞬介がやるべきなのは、価格をいくらにするか悩み続けることじゃない。その価格を、相手が納得する価値で埋めることなんだ」

瞬介は黙って聞いていた。

「6千円もらうなら、6千円以上の価値を返す。1万円もらうなら、1万円以上を返す。受け取った以上のものを返し続けていれば、価格は自然と上げられるようになる

「ってことは、逆に言うと・・・」

「うん。価格に価値が追いついていない状態で値上げすると、必ず離れられる。だから怖いのは値上げそのものじゃない。価値が伴っていないことなんだ」

怖さの正体

オンラインミーティングの最後に橘は付け加えた。

「さっき瞬介、1万円もらう資格があるのかって言ったよね」

「はい」

「その感覚は、忘れないでいい。その怖さがあるうちは、手を抜かないから」

「はい」

「怖くなくなったときが危ない。もらって当然だと思った瞬間に、価値の提供が止まる

瞬介はメモの最後に、一行だけ書き足した。

怖さは、手を抜かないためのブレーキ

瞬介のメモ

その夜、瞬介は料金表を作った。

正規料金 1万円。

そして、その下に小さくこう書いた。

開業記念 初回限定6,000円(先着20名様まで)

指が震えたが、書けた。

まとめ

・安売りはダメ。でも実績のない状態で高すぎても顧客は来ない

・先に正規料金を決めて、そこから期間限定で下げる

・「値上げ」ではなく「元に戻す」形にすれば、抵抗が生まれない

・安くする理由と期限を、必ず先に決めて公表する

・安い期間は集客期間ではなく、次の価格を支える証拠を集める期間

・受け取るのは価格、提供するのは価値。価値を決めるのは相手

・「もらう資格があるのか」という怖さは、手を抜かないためのブレーキ

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